ゆびさきちまちま

　｢年号は、気合で暗記するしかないと思うなぁ｣

　白い指先で教科書をなぞる。
　彼女の筆箱の中は、色とりどりのマーカーでいっぱい。古い教科書を開けば、虹のように線が引かれている。

　開いたページをうつむきがちに見つめて呟く。
　そこに懐かしい何かでも見つけたのか、一瞬だけ目を眇めて。そして困ったように笑う。

　｢でも暗記するだけじゃ、きっと楽しくないね｣

　何か面白い語呂合わせでもないかな。
　そう呟いて首を傾げて見せた。

　いつもは叫んだり、笑ったりとくるくる音律の跳ね回る彼女の声だが。教科書を。ノートを読み上げるその声は、ラムネ菓子のように甘くて儚い。
　それでも唐突に、まるで魚が水面から飛び上がるかのように突然声を張り上げて、文法の変化を暗証させたりする。
　突然やっても、できるようになればもう暗記してるよ。
　ぱんぱん、と机をたたいて歌のように声を合わせて繰り返す。それはなんだか楽しげにも見えた。


　静かな勉強の中。苦手な数学は二人して頭を突合せ問題を解く。
　彼女も同じようにして問題に挑み、彼が答えを導き出せば。世紀の大発見化のように喜び、笑った。
　そして得意な科目こそ、教えるのに困るようだった。
　彼女はどうやら好きな科目を勉強したことがないようなのだ。暗記するしかない年号や漢字の書き取りは別として。
　だから、世界史は物語を語るように話した。
　この国がこうなってああなって。その同時期あっちではこうなってる…ちなみにこっちでは……。
　途中脱線もかなりしながら、楽しそうに世界の歴史を語る。
　地図の上で、歴史は流れではなく、彼女の白い指先で波紋のようにいくつも広がり。ぱちぱちとはじけるようだった。
　そんな時にふと。　

　｢……はねこのお父さん、学校の先生だったんだよね｣

　…合間に、思い出したように｢人生について語る｣のだ。

　「国語の先生でね。はねこ、すごくたくさん本を買ってもらってた気がする｣

　天井を見上げて、何気なく一言二言。

　「だから、今でも本は好き。　国語、あんまり勉強しないですんだのも、きっとそのおかげかなぁ｣

　さすがに文学史とかは、勉強しないと覚えないけど。
　笑って再びノートに目を落とす。ふと落ちた沈黙に、彼が何か言おうとした瞬間。

　「古典、上一段活用の動詞８つー、はいっ」
　｢え…？ええと…｣

　いいひにきみ、いる、みる。　
　そう覚えるんだよ。ならったもん、前に。　

　そういって羽根は笑った。　











　試験が近いので勉強風景など。
　
　………勝手に書きましたぁぁぁぁすみませんーーーっっっ！(土下座)
　何かこれちょっと…という問題があったらさくっと修正しますので、鏡くん背後さん許してくださいぃぃぃ


　なんとなく、静かーな勉強風景になりました。
　意外と大人しい羽根が不思議だけど、なんかこれはこれですごく幸せなカンジです。
　てゆか、私の心が潤いm(撲殺音

　げほげほ。
　ちなみに｢いいひにきみいるみる｣は、「射（い）る」「鋳（い）る」」「干（ひ）る」｢煮（に）る」｢着（き）る」｢廻（み）る」｢居(ゐ）る」｢見（み）る」ってカンジです。でも他にもあるから、これだけじゃないぞ！w　メジャーどころ8種なだけだ！ｗ