ゆびさきちまちま

　…セクシーに、なるだろーか。

　試してみるべきでしょーか。

　てゆか、まぁセクシー系の服を着ることぐらい別になんとも思わないんだよね。
　だって……

　ヘソ出しくらいはデフォルトだったりするし（何

　でもお腹出してるたびに、ラスプラにて絶滅危惧種指定を受けている『昭和の男』に、『年頃の女が腹だしてんじゃねぇ！』と叱られるので、最近してない。（ちなみに冬もそんなことやってて、風邪ひいたりしたんでやめた/アホ）
　
　んで?
　セクシー系ってなんですか。クラスターの言ったとおり、アラビアンナイトの格好でもすればいいの?

　（衣裳を受け取り）
　………んー。
　水着とさほど変わらないと思う……。
　

　

　………涼しい。
　薄い紗の素材がふんわりと体を包んでる。頭からかぶったヴェールが面白くて、くるくるとその場で回ってみる。
　着ているのはセクシー系アルバイト服。この場合はなんだろう、何のご職業なのかは知らないが、アラビアンナイトのお姫様のような服だ。
　（占い師?　ベリーダンス？）
　胸までの短衣に、足の透ける素材のパンツがついている。顔を半ば隠すように頭からヴェールもついているが、マントのようで綺麗だな、と思う。

　残念ながら、いわゆる肉感的なスタイルを持っていない羽根の肢体は、肌の白さとあいまって実はとても頼りなく見える。
　手足はもちろん、腰などは一掴みできそうな細さをしているし、肩も薄い。
　それでも儚げに見えないのは、元気一杯走り回る彼女自身の所作によるものだろうし。走り回ったあげくすっ転んだり壁にぶつかったりする残念さのせいだろう。

　そんなわけで、ほそっこい彼女がセクシーに挑戦したところで、にわかに色香が漂うはずもなく。
　物慣れない衣裳に身を包み、めずらしそうにしている様子は異国に放り出されたランプの精だ。ヘソだしも気にした様子がなく、ふわふわした自分の髪をくるくる指に巻きつけている。もはやこの格好に飽きはじめたようだ。
　「で。セクシーなんだろーか、これ」
　なんだかむなしくなってきた……。
　「てゆか、せくしーぽーず……」
　……胸に谷間ができないので、悲しい思いしかできなかったりする。
　「……澪せんぱいみたいにむちむちならよかった…」
　本人に聞かれたら、泣くまで小突き倒されそうなことを呟く。
　「………んー」
　てもちぶたさん。もとい、手持ち無沙汰でうなってみる。
　「これならツッコミされたほうがましだー」
　実験失敗。　
　羽根も背後も深く後悔した。