ゆびさきちまちま

　…幸い住むと人の言ふ。



　幸せの始まりを見てるみたいで楽しい。
　やっぱり、私は…そういうのすきだなぁって思うのでした。

　……あまり、夢を見なくなった気がした。

　冬が終わって、春が来たから。私は滑らないようにして屋根に上る。
　いつからか。けれど変わらない癖で。少しでも空に近い場所に行きたがる。
　全てを一度空の果てで失って、また一度手に入れて。

　「…あ。そか」

　そしてまた失っても、みんな失ったって。

　別に、私の何かが変わるわけでもなし。
　と、思う。

　「至上の命題……」

　ごろんと、屋根に背中をつけて仰向けに転がって。
　甘い水の香りのする春風を感じながら、空を見る。
　…こうするのだって、もう何度もきっと繰り返した。

　「……たとえば、泣きたくないとか」

　呟く。
　
　前の私の世界は、ひとつのものしかなくて。それがなくなったらもう、何も残っていなかった。
　ばかみたいだけどそうでした。だから私は混乱して、どうしたらいいかもわかんなくて。泣いて拗ねてみたのです。
　そんな感じで一年と半年？
　時々泣いたり。全力で走ったり。歌ったり。泣いたり。寝たり。色々したけど。

　結局今も変わらずに。きっとバカのままなんだろうなぁと思いつつ。
　それでもいいか、なんて勝手に自分を許してみるのデス。

　許したついでに、幸せになりたいなとか思ってみるのデス。

　どこに行けば、そんなもの見つかるかなんてわっかんないけど。
　って言うか、何が幸せなのか。もう今はわかんなかったりするけど。
　でも少なくとも、結社を作って今いる分には、悲しくない。

　…ずっとかなしかったんだなぁとか。
　今思ったりする。
　かなしいって言わなかったなぁとかも。
　まぁ…意地を張るのって得意分野だから、たぶんこれからも言わないつもりデス。

　　



　










　ずっと“幸せ”を捜し求め続けてきた。
　でも、“幸せ”は見つからなかった。
　それはとても悲しいことだったけれど、
　でも“幸せ”がないというわけではない。
　どこかに──、どこかに、きっとあるんだよ。





　…そういう風に、言える人に。
　哀しんで泣く人に言えるようになりたいな。