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ゆびさきちまちま

トミーウォーカーのPBW「シルバーレイン」内に存在するキャラクター「雪村・羽根」のブログです

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朝。
 
 北国の朝の冷たさは、それに馴染んだものであっても厳しい。
 喉に入り込む滑らかな冷気に、羽根は胸を押さえて数度咳き込んだ。

 「……大丈夫ですか?」

 かけられた声に、羽根は「大丈夫」と返す。気管支が弱い羽根は、冷たいものを食べても咳を出す。
 だが、それだけのことだ。

 全国襲撃が予知された時、結社ラストプラスの面々は防衛場所に函館を選んだ。
 特に意味があったわけではない。羽根が面識のある島牧こたんが、そこの防衛に赴くから。あと、道内出身者がいるため、多少の土地勘が函館にはあったから…だ。

 朝一の飛行機で函館空港に降り。函館の朝市を見ながら、朝食をとる。
 観光客と変わらぬ行動をし、ベイエリアと呼ばれる港町地域を偵察する。
 全国でも有数の観光都市である函館では、観光客のふりをすればたいていのことは怪しまれない。
 そして何より、冬季は雪を目当てに観光客が増える時期だ。紛れ込むのはたやすい。

 「…函館は、雪が少ないわね……」
 「そだね、札幌よりもちょっとあったかいかも?」

 道内出身者である羽根と九浄砂夜が呟く。それを聞いていた羽鳴竜太が「げっ」と顔をしかめた。
 暖かいといっているが、気温はマイナス5度だ。少ないとはいっても街は白く化粧を施され、見える海も灰色に重くたゆたっている。

 「イカも食ったし、そろそろレンガ倉庫の見学に行くとするかね」

 今まで沈黙を続けていた、東沙柊二が呟いた。腕時計で時間を確認している。
 ラストプラスの、精神的支柱は彼だ。そして。

 「……そうですね」

 砂夜がうなずく。意見をさしはさまないシンプルな同意は、柊二の決定を完全なものとする。
 戦闘開始まであと数時間である



 一通り、金森倉庫や美術館を見て…時間があるからと湯の川の温泉まで回ったあと、「腹が減っては戦はできぬ」などと呟いたのは、神経がナイロンザイルである、暴君こと、東沙柊二である。
 
 かといって、正午の襲撃前には準備を整えておくべきであろうから、早めの時間に彼らは近くにあるご当地バーガーショップに入る。
 「ハナちゃんはふとっちょバーガーいきなよ」
 「うわ、でけェ。こんな食えるはずねェだろ」
 食べ盛りの青年が、情けない…というなかれ。このあと彼らは生死をかけた戦いに行くのだ。そんなときに、のんきに大量のバーガーが頼めるはずもない。
 「縁結びバーガー…護さんと食べたかった…」
 「一人で、食ってろ。寂しく完食しろ。そして呪われろ。あ、店員さんこいつ縁結びバーガーで」
 「違いますぅぅぅ!はねこ、土方ホタテバーガーにする!」
 ……生死をかけた戦いに行く、はずであるが思いのほか和やかにメニューを注文する。
 ―――もう、慣れっこなのだ。
 日常と非常の境目をゆらゆらと行き来しながら戦うことに慣れている。
 緊張で、食べ物が喉を通らない…などと言う状態は、びびりーずであってもすでに通り過ぎている。そんなものは、函館の地を踏む前に終わらせてきた。
 4人座りのボックス席で、注文の品を前にしながら、羽根と竜太は携帯を取り出す。所属の結社などから流れてくる、学園や各地方の状況を集めているのだ。
 「……早く、お食べなさい…?」
 とりわけ食べるのが遅い九浄砂夜が。頼んだミートスパゲッティーを、何故か箸にまきつけながら二人に言う。そして何故か自分の分を取り皿にとって、残りを羽根と竜太の前に押しやった。
 「若い子はたくさんお食べなさい……」
 おばちゃんみたいなことを言い出す砂夜に抵抗する気力もなく、食事中の粗相をたしなめられた子供のように、二人は携帯をしまうとそれぞれのバーガーの包装紙をはがす。
 「まだ…どこも静かみたい」
 4人の中では、比較的大きな結社に所属し。なおかつマヨイガの自結社を持っている羽根が、ポツリと呟く。おそらく一番学園内を回る情報に詳しいのは彼女だろう。
 「だろーな」
 柊二がポテトを口に放りこみながら呟く。
 「今頃……」
 「羽根ちゃん」
 何かを呟きかけた羽根を、砂夜がやんわりと黙らす。羽根よりは数倍賢明な竜太は、苦い顔をしたままとんかつバーガーに噛み付いた。
 今、この時も。どこに敵がいるかはわからない。用心に用心を重ねなければならないのだ。
 「……護さんにメールするー……」
 3人の無言の圧力にへこたれた羽根が呟くと。
 「リア充は爆発するがいい」「しなさい」「しろよ」
 同時に答えが返ってきた。
 


 1月15日 函館(2)へ
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此処にあるイラストは、株式会社トミーウォーカーの運営する『シルバーレイン』の世界観を基に、作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注したPLに、著作権は各絵師様に、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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